千綿偉功的日々 Hidenori Chiwata Official Website

 
千綿偉功的日々
Top Information Profile Discography
Entry
Archive
Chiwata's Diary
2006/12/30 04:39 <旅日記 6>

『5日目』

 アラームが鳴るより前に、ハッと目が覚める。手足のかゆみと戦いながら、いつの間にか眠りに落ちていたようだ。暴風雨はいまだ止まず。さて今日はどうする。まずはフェリー会社に運行状況を確認。「通常通り」ということだ。よし、取り敢えずはいったん石垣島に戻ろう。始発の便に何とか間に合いそうだ。雨が小降になったのを見計らって港まで歩く。風はまだ強い。本当に船は出るのか?桟橋に着いて辺りを見回すと、駐車場に“あの”パトカーを発見。近付いて行くと車内に“あの”お巡りさんを確認。昨晩のお礼を告げ、フェリーへと乗り込んだ。それにしても風が強い。大丈夫かなぁ。その心配は、出港してすぐに形として現れた。今までに経験したことのない強烈な揺れ。右に左に傾きながら、船首が海面に叩き付けられる。決して大きいとは言えないその船体が、高くうねる荒波に飲み込まれそうになる。船内からは悲鳴にも似た叫び声があがる。真後ろに座るおばあさんは解読不能(琉球語であろう)な「念仏」らしきものを唱え始める。両手でしっかり掴まっていないと体が宙に浮きそうだ。1時間以上そんな状態が続いた。大袈裟かも知れないが、生まれて初めて、“死の恐怖”というものに身震いした。気が付けば僕も、心の中で『ナムアミダブツ』と繰り返していた。生きた心地のしない時間を乗り越え、やっとの思いで石垣島に到着。波照間島を出る時は、船が運航しているのであればそのまま乗り継いで西表島まで行こうと思っていたが、余りの恐怖にその気もなえた。今日は石垣島に泊まろう。
 例の友達に連絡。彼の仕事(車で島内を営業して回る)に同行させてもらい、いくつかの観光スポットを案内してもらう。その後、中心街で車を降りた。さて、まずは今夜のねぐらを確保しないと。雨の中、一人カッパで宿探し。街中の貼紙をチェックしたり、CAFEに入ってタウン誌で情報を得たり。それらを元に、とにかく市街地を歩き回っていると、奇跡とも言える偶然が起きた。地元の人、観光客、色々な人達が通り過ぎて行く歩道を、一人の青年が横切った。ふと目をやるとどこかで見た顔。その瞬間、僕は声をあげていた。『オイ!』向こうもびっくりした様子。その彼というのは、なんと、竹富島の同じ宿に泊まっていた二人のうちの一人、あの大学生「T」だったのだ。ほんの少しでも何かがずれていただけで、きっと出会わなかっただろう。奇跡的な再会に鳥肌が立った。石垣で1泊していくという彼。せっかくなので、夜、タイミングが合えば酒でも飲もうと言って別れた。
 雨が強くなってきた。傘はないのでカッパのみ。リュックがびしょ濡れになりそうだ。持参していたブルーシートをかぶせる。この際、体裁は気にしてられない。着いた初日に歩き回った時の記憶を頼りに歩いていると、一軒の宿を発見。探し回る気力もなえ始めていたので『もうここでよし!』と決める。そこはドミトリー形式の素泊り宿だった。パイプで組んだ3段ベッド。共同の居間と食堂。台所は自由に使える。なんと、そこに2ヶ月もいるという男の子や、泊まりながらバイトしてるという人もいた。何だか楽しくなりそうだ。

061217_0953~01.JPG061217_0952~01.JPG

 2泊の予定でチェックインを済ませ、荷物を置き、晩メシの買い出しへ。ゴーヤチャンプルでも作ろうかな。市場のおばちゃん達に聞きながら、必要なモノを一通り揃えた。その他、ビールと泡盛、地元のかまぼこ、そして以前から一度は食べてみたかったイラブチャー(ナンヨウブダイ)の刺身を買って宿に戻る。下ごしらえを済ませ、さっそく一人で調理開始。チャンプルの味付けは舌が覚えてる勘を頼りに。18時半くらいには出来上がった。今日は朝から何も口にしていない。いや〜マジ腹減った。いただきます!宿の誰よりも早く、一人の食堂で食べ始めた。

061214_1847~01.JPG


 そのうちにぽつりぽつり人が集まり出し、食堂も賑やかになってきた。気が付けば宿のオーナーさんとも仲良くなっていた。21時を過ぎた頃、昼間に逢った大学生Tをこの宿に呼び出し、みんなと一緒に飲むことに。23時の消灯後も飲み足りず、二人で宿を出て飲み屋を探した。2時半まで彼と語り合い、笑顔で別れ、それぞれの宿へ戻る。長い長い一日が終わろうとしている。3段ベッドの2段目へ静かに上がり、寝袋の中へするりと滑り込んだ。ふぉあ〜、おやすみ。つづく。

Search
Hidenori Chiwata Official Website