千綿偉功的日々 Hidenori Chiwata Official Website

 
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Chiwata's Diary
2006/12/29 06:37 <旅日記 5>

『4日目』

 7時起床。朝食後にバタバタしないで済むように、ある程度の身支度をし、フェリーの時間を確認する。それから軽く朝の散歩へ。天気は薄曇り。

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 8時から食事。予定より少し早めに旅立とうかと思った矢先、面白そうな話が耳に飛び込んできた。「今日はこれから仔牛の出荷作業があるけど・・・。見に行く?」と。すると僕『どれくらいでここに戻って来れますか?』。宿の人「分からん!」。まあどうにでもなるか。急ぐ旅でもなし。ということで、他の宿泊者2名も一緒に軽トラの荷台に乗っけてもらい、牛舎へGO!

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 石垣島で行われる“セリ”に出すため、今日は3頭を港から船に積み込むということだ。運搬用トラックに乗せる一部始終を見せてもらった。荷台から下ろされたスロープ。角にかけた綱を左右から引っ張りながら、力ずくで上らせる。見てる以上に大変な作業なんだろうなぁ、と思ったと同時に、本気で嫌がり抵抗する牛の気持ちを考えてしまい・・・、切なくなった。心ん中で『頑張れ!』って叫んだけど、一体何を頑張れって言うんだよな。『高い値がつくといいね・・・』それもなんか違うし。結局、単純かもしれないけど、『これからもちゃんと“いただきます”って言おう』と思ったよ。「可愛そう」だけじゃ僕らは生きて行けない。一人一人にそれぞれの生活があり、色んな命に生かされているんだね。

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 気分的に何だかちょっぴり湿っぽくなってしまって、どうしようか迷った。今日まで泊まろうかなぁ・・・。いや、ダメだ!旅に未練は要らない! 後ろ髪を引かれながらも踏ん切りを付け、チェックアウト。おばあに挨拶、他の2人に別れを告げ、何とか予定通り11:00発のフェリーに間に合った。竹富島よ、絶対また来るからな!

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 いったん石垣島へ戻り、チケットを購入。次に行ってみたいと思った島は、石垣島から南西に63Km、船で1時間ほどのところにある。その島では2月から6月にかけて、南の水平線上に南十字星を見ることが出来るという。目指すは・・・

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 波照間島。日本最南端に位置する有人島だ。12時到着。航路の途中は、それなりに波があって揺れたが、嬉しいことに、雲が切れて陽が差し込み青空ものぞいてきた。待ち合いターミナルでトイレ。歩くことを考え、半袖に着替える。売店のおばさんに『あのー、島の地図かなんかありますか?』と聞くと「ハイ!200円」。えっ、お金とるんですか!? 背に腹は代えられず仕方なく購入。面積は竹富島の倍くらいか。歩けないこともないな。よし、いざ日本最南端の地へ。でもまあ急ぐことはない。寄り道しながらのんびり行こう。まずは島北部の史跡へ向かうことに。誰も通ってない道を一人黙々と歩いていると、背後から一台の車が近付いてきて止まった。巡回中のパトカーだ。よほど怪しかったのかなぁ。僕より年下だと思われる人の善さそうなお巡りさんが話しかけてくる。「こんにちはー。お一人で?えっ!歩きで?いやー厳しいと思いますよ。ん〜、宿は取っといた方が無難です。・・・、では気をつけて!」と、軽く言葉を交わし別れた。

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 辿り着いた城跡は何だか薄気味悪く、少し怖い感じがした。そこから島の中心の集落部へ。

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 いくつかの固まりが散在していたので、その全てをほぼ隈無く回る。竹富島に比べると、道は舗装され、やや活気がない印象を受ける。きっと時期的なことも大きいのだろう。集落を抜けるともう民家は一軒もなく、サトウキビ畑や原生林に囲まれた道をただひたすらに歩く。

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 レンタサイクル、レンタバイクに乗った一人旅の輩、数人とすれ違いざまにあいさつ。農作業中の島民の方にあいさつ。向こうからしたらきっと変な兄ちゃんなんだろうね。でも、なぜだか不思議と挨拶したくなるんだよね。さらに歩を進める。15時前、ついに到着。日本で一番南の地を踏んだ。

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 遥かに続く海を望みながら、「国境」とか「国籍」とは何だろう?と思った。山形県で放された蝶々が沖縄県で発見されたというニュースがあったけど、確かに、勝手に「線」を引いているのは人間だけだよなぁ。

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 達成感というのか、到達感とでもいうのか、心が満たされている感じがあって、1時間ほど草の上に横になっていた。さて、これからどっちへ行こう。海を左手に見ながら時計回りに歩こうか。地図中に「展望台」の文字を発見。よし、次はここだ!

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 5キロほど歩き「ソコナ展望台」に到着。石を円柱状に積み上げたもので、高さは5メートルといったところか。その上に駆け登り『おりゃーーーーっ!』と雄叫びをあげる。360度の視界の中に人間の姿は一つもない。動くものと言ったら、白いヤギの姿がぽつぽつと見えるだけ。見渡す限り誰もいないという、この開放感。日常では味わえない、至福の瞬間だ。結局、夕陽が海に落ちる寸前までそこにいたが、誰一人やって来なかった。さあこれから暗くなるぞ。急いで宿探しだ。いやその前に、腹ぺこなのでメシだ。中心部とは違う西側の集落を目指した。

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 一軒の食堂を見付け飛び込む。まずは生ビール。う〜ん、最高の味。食事を済ませ、急げ宿探し!それからまた1時間強、数軒を見て回ったが、この期に及んで優柔不断。どこもピンとくる所がない。う〜ん、どうしよう。何だか面倒臭くなってきた。何をどう血迷ったのか、足が向かうのは、朝一番にフェリーを降りた港の方向だ。外灯もない真っ暗な道を、持参していたヘッドライトで照らしながら歩く。決して気持ち良くはなく、爽快だとは言い難い。何とか港へ辿り着き、ターミナルの軒下に座る。明日の朝イチ便まで、ここで夜を明かすことにしよう。ブルーシートを敷き、横になった。何もやる事がなく、この数日間を振り返ったりしていた。1時間ほど過ぎただろうか。車が近付く気配を感じた。その瞬間、『うわっ、ヤバっ!』。パトカーだ。「お兄さん、ダメだよ野宿は!」と注意される。実はそのお巡りさん、昼間に声を掛けられたあのお巡りさんだったのだ。想像するに、恐らく、島民の方から通報があったんだろう。「港に向かって動く光がある」とか「変な人が歩いてる」とか。『昼間はどうも!キャンプ禁止ってことは何となく知ってたけど、外で夜を明かすのもダメなんですね。お騒がせしてスミマセン!』そう言う僕に対し、「うん、数年前に殺人事件があってから厳しくなってねー。」と、お巡りさん。「とりあえず乗って!」と言われパトカーで近くの素泊り宿まで送ってもらった。パトカーの中で世間話になり、彼が島でたった一人の警察官であることを聞いた。丁重にお礼を言い、宿にチェックイン。かなり遅い時間だったので、宿の人も困惑している。

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 シャワーを浴び、衣類を手洗い。部屋の中に干し終えて床に入ったが、その部屋には、夜通し格闘しなければいけない手強いヤツがいた。畳の隙間から這い上がってくる沢山の“アリ”だ。ウトウトしてるとチクリ。そしてまたチクリ。あー、寝れねぇー。そうしてる内に、窓の外では風が強まり、気が付けば土砂降りに。あのまま野宿してたら今ごろ大変なことになっていた。うわ〜、なんか命拾いしたような感じだな〜。お巡りさんに見付かって良かった〜。アリに悩まされながら、熟睡してるんだかしてないんだか。そうやって、嵐の夜が過ぎて行く。つづく。

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